1873年にヴェルヌの『八十日間世界一周』という本が出版されました。
この話は今の交通手段を使うと80日間で世界一周が出来るという小説で欧米で爆発的に売れてベストセラーになったそうです。
私が読んだ本は、それから16年後の1889年に実際に世界一周をすれば80日間の記録を破れるか?という女性記者のお話です。ネリー・ブライという女性記者が企画してニューヨークの新聞の企画としてこの偉業がスタートされたのですが。。。
ネリーはヴェルヌの『八十日間世界一周』と同じく東廻りでアメリカから欧州に渡ってアジアから太平洋を渡ってアメリカに帰るルートを選びました。この一報を聞いた他の雑誌社が東廻りより西廻りの方が季節風の関係で早くつけるやろってことで急遽、同じく女性記者のエリザベス・ビズランドをたててネリーの出発から8時間後に西廻りで世界一周をスタートさせます。
このエリザベスの方は、急に言われてそのまんまチケット持たされて大陸横断鉄道に不本意ながら乗せられて開始。
ネリーの方は世界一周の半分の地点の香港でようやく世界一周を挑戦しているのは自分だけじゃないって事を知ります。さてどっちが早く着くか?
19世紀に本当にあったお話であります。
500ページ以上あるのでかなり読むのは大変ですけど面白いです。
世界一周の話なので旅行記と思いながら読み始めるんだけど全然そんなことはないんです。世界史とか詳しい人だったらそこまで面白いものではないかもしれんけど。。。。当時はこういう状況だったのかと改めて知りました。
欧州はとかアメリカみたいな先進国は違うとか思ってたけど生活に困っていた人はどの時代でもいっぱいいたんですよね。
それにひきかえ今の日本は?って考えてみたら私は豊かだと思う。自分たちが悲劇のヒロインぶってる場合じゃないって思ったかな。
^_^
ネリーの取材した精神病院なんてえぐい。
日本の蟹工船や足尾銅山もそうなんだろうけど、資本家と労働者の対立って資本主義という概念が出来たくらいからずっとおこってきたことなんだろうなってね。
船の三等室の話とか。。。船の1等、2等室の乗客は快適な船旅が出来るんだけど、三等室はすし詰めで隔離されていたんよ。
三等室の乗客を観察することが大きな楽しみだったってまでいってる。
格差!格差!この本ではそのオンパレードですよ。
男女の格差、記者にしてもそう。
カルフォルニアの中国移民問題から反中国人キャンペーンまで。。。
アメリカ人労働者たちの不満を雇用者からそらし自分たちよりさらに搾取されている弱者に向けさせることは好都合だった。
いつの世でも同じ騒動がおこっている。現代でもまた。。。外から安い労働者を呼んで使い倒して必要なくなったら排除する。
移民に対して開放的であることをモットーとしていたアメリカは、1880年代に至って移民排斥を新たな伝統とすることになったのだ。われわれはドアノブから手を離さずにおこう。そして好ましい客だけを迎え入れるのだ。
今のアメリカも同じようになっていくのですかね。蒸気船の石炭をくべる火夫の話とか。。。
しかし世界各国の物乞いっていつから存在するのだろうか?ってこれを読んで思ったのでした。船が対岸に着くと物乞いが。。。どこの港でも発生する。それも世界各地で。。。この物乞いはどっかの文化だったのか?自然発生的に根付いてしまったのか?どうなんだろうね。
そうだ。この世界残酷だ。その犠牲の上に自分達は生活出来ているんだって強くこの本を読んで思いました。是非、読んでみてください。オススメです。
最後に、昔の日本も出てきます。
エリザベスに至ってはこの後にも2回ほど滞在してたみたいですよ。
そんなとこ。
ほな!
柏書房
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